尾原和啓さん、けんすうさん、深津貴之さんの共著『努力の価値が変わる時代の「AI×自分」戦略:メタスキル』を読みました。
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www.amazon.co.jp/dp/4910063455
本書は、生成AI時代に、私たちはどのように自分の価値を出していけばよいのかを考える本です。

生成AIは、文章を書き、プログラムを書き、企画の壁打ち相手になり、分析の補助もしてくれます。便利になった一方で、これまで人間が努力して身につけてきた知識やスキルの一部が、AIによってかなりの程度まで再現されるようになりました。
では、これからの時代に、人間は何を磨けばいいのでしょうか。
本書の答えが「メタスキル」です。
本書では、以下の5つがメタスキルとして紹介されています。
- 構造化
- 問いの言語化
- ゲームをずらす
- 自分のモジュール化
- AIチーム術
本書は4章からなるのですが、それぞれの章について考えたことを書いていきます。
(1章から)「頑張る」ことが資産にならない時代
第1章のタイトルは、
「努力の方向性が変わる瞬間に、私たちは立っている」
です。
その中に、尾原さんが書いた、
「『頑張る』ことが資産にならない時代の始まり」
という節があります。
これは、かなりパンチの効いた言葉だと思いました。
私は今59歳で、キャリアのほとんどを「AIなし」の時代に過ごしてきました。その実感からすると、努力はかなりの確率で資産になりました。
本を読む。
手を動かす。
失敗しながら経験を積む。
人より少し多く考え、人より少し多く試す。
そうした努力は、時間はかかるけれど、少しずつ自分の中に蓄積され、仕事の成果につながっていく。少なくとも私は、そういう時代を生きてきたという実感があります。
だからこそ、「頑張ることが資産にならない」という言葉には、少しドキッとしました。
もちろん、これからも努力そのものが無意味になるわけではないと思います。私自身、努力することは好きですし、得意な方だと思っています。
ただし問題は、
「どの方向に努力するのか?」
です。
AI時代には、努力すれば自動的に資産になる、というほど単純ではない。努力の方向を間違えると、せっかく時間をかけても、AIによってあっという間に代替される能力を身につけるだけになってしまうかもしれません。
そのための答えとして、本書は5つのメタスキルを提示しているのだと理解しました。
(2章から)構造化は、リスクを取るためのスキルでもある
2章では、5つのメタスキルを詳しく説明しています。その中で、私が特に面白いと思ったのは「構造化」です。
私にとって構造化とは、物事を分類し、階層化し、分けたある「部分」が別の「部分」とどのような関係にあるのかを明らかにすることです。
つまり、物事を深く理解するための作業です。
たとえばデータ分析でも、売上が下がっているときに、ただ「売上が下がった」と見るのではなく、商品別、チャネル別、顧客属性別、時系列別に分解していく。そうすることで、どこに問題があるのか、どこに打ち手があるのかが見えてきます。
ですので、私にとって構造化は「理解のためのスキル」でした。しかし本書では、構造化について少し違う角度から語られています。このパートの著者である深津さんは、構造化によって不確実性を分解でき、最大のダメージを一定の幅の中で想定できる、という趣旨のことを述べています。
つまり、構造化する力がある人は、そのスキルを使って問いを発することで、生成AIからより良い答えを引き出せる。ということだと思いました。
私は今59歳です。正直に言えば、いまから大きなリスクを取らなくても、なんとかやっていけるのではないか、と思っている部分もあります。しかし、生成AIを使ってリスクを構造化し、致命傷を避ける設計ができるなら、まだまだチャレンジできるのではないか。そう思いました。
(3章から)AI時代には、人的資本の蓄積の仕方が変わる
第3章は、
「AIで自分の『資産』を循環させる仕組みを作る」
です。
この章では、「自分の資本を回す人生の攻略法」として、時間、人的資本、社会資本、金融資本の関係が図で説明されています。この考え方は、山口周さんの『人生の経営戦略』に出てくる「人生というプロジェクトの原理」の図を思い出させるものでした。山口さんの図に著者の深津さんの考えを付け加えたものです。
私も以前、山口さんのオリジナルの図に私の考えを加えて、私なりに考えを深めたことがあります。山口さんの提示された図は非常に本質的なので、自分の考えが深まりやすく、結果、何か付け加えたくなるんでしょうね。
本書では、生成AI時代には、これまでであれば時間と努力を投下すれば得られていた「人的資本」の一部が、蓄積されづらくなるのではないか、ということが語られています。
ここは大きくうなずきました。
これは、特に若い人にとって重要な問題だと思いした。山口さんのオリジナルの理論では、時間は人的資本にしか化けず、人的資本の蓄積なくして社会資本の蓄積はなく、社会資本の蓄積なくして金融資本の蓄積はありません。
だからこそ、最初に大事なのは人的資本です。
自分の子供を育てる親や、組織においては部下を育てる立場の人は、どのような仕事を、どんなやり方でやってもらい、どんなスキルを身につけてもらうか、それを本書で紹介されたメタスキルの観点から設計してあげると良いのではないかと思いました。
(4章から)メタスキルのさらに上位の話
私にとって、もっとも読み応えがあったのは第4章です。
第4章のタイトルは、
「これから起こること ー AI時代の『人間』の再定義」
です。
本書のテーマであるメタスキルは、名前の通り「メタ」ではありますが、やはりスキルです。スキルは努力で身につくものなので、どんなスキルを、どうやって身につければよいのが、1~3章で語られています。
しかし第4章は、少し毛色が違います。ここで扱われているのは、スキルを超えたテーマです。つまり、
「これから、どんなふうに生きていけばよいのか」
という話です。私は、第4章を、メタスキルのさらに上位のレイヤーの話として読みました。
著者3人は、それぞれ異なる言い方で語っています。
けんすうさん:「属性」と「文脈」こそが、唯一の商材になる
深津さん:人間が価値を出せるのは(中略)あなた自身の一次情報
尾原さん:自分の「偏愛」や「こだわり」を世界に一つだけの工芸品にまで高めていく職人になるべき
しかし、私には、3人とも本質的には同じことを言っているように感じられました。それは、
「自分の好きなことを、おかしなくらい突き詰めればいいんだよ」
というメッセージです。
生成AIは、非常に優秀です。しかし、多くの人がAIの答えに従うようになると、アウトプットは必ず似てくるし、平均的になっていきます。その「裏」を行く。生成AIによる平均的な答えは知りつつ、AIによって「ろ過」や「蒸留」されていない、その人固有のエッセンスを磨く、そして、そのエッセンスは、「好き」から始まる体験や、偏りや、継続の中にある。
このメッセージにはとても励まされました。
まとめ:「好き」と「努力」の接続が大事になる
本書を読み終えて、改めて考えたのは、努力の価値がなくなるわけではない、ということです。
むしろ、努力はこれからも大事です。
ただし、努力の方向性が変わる。
AIに代替されやすい作業を、ただ一生懸命に繰り返すだけでは、努力が資産になりにくいかもしれません。
一方で、自分の好きなこと、関心のあること、経験してきたことを起点にして、構造化し、問いを立て、AIを使って加速し、自分なりの価値に変換していくこと、つまり、「好き」と「努力」を接続し、循環させることができれば、努力はこれまで以上に大きな資産になる可能性があります。
私自身も、毎日生成AIは使っていますが、単なる便利ツールとして使うだけではなく、自分の努力の方向性を見直し、自分の資産を循環させるためのパートナーとして使っていきたいと思いました。
本書を読んで、さっそく、一つ、自分の資産を循環させ、複利で回せるようになるかもしれない、ワクワクするアクションを思いつきましたよ。
本書、おすすめです。