先日、Google Cloud主催の「Data & AI Summit ’26 Spring」というオンラインセミナーを視聴しました。その中で、BigQueryの新機能として「BigQuery Graph Analytics」というものが紹介されていました。
2026年4月15日にローンチされたばかりの、まだプレビュー段階の機能です。ざっくりいうと、データ間の関係性をグラフ(ネットワーク)構造として分析できる機能です。セミナーで紹介されていたユースケースは、原材料→部品→製品→顧客という4つのエンティティの関係性のグラフによる可視化です。一つの原材料が複数の部品に使われていることはよくある訳ですが、描かれたグラフは、たとえば、ある原材料に品質問題が発生した場合、どの部品、どの製品、どの顧客に影響が及ぶのか、ということが瞬時に分かるような可視化でした。
また、Google発信の記事を読むと、Graph Analyticsには金融詐欺の検出や、ソーシャルネットワークの分析などがユースケースとしてあるようです。そこでは、ウェブのアクセスデータが対象として挙げられていたわけではありません。
でも、聴きながら「GA4のページ遷移って、これで見ると面白いんじゃないか」と思ってしまいました。ユーザーが「あのページからこのページへ」と移動していくデータは、グラフ(ネットワーク図)で表現できるはずです。さっそく試してみました。
こんな図が作れました
対象は、BigQueryの公開データセットとして誰でも使えるGA4のECサイトサンプルデータです。実物を見ていただけるリンクが本記事下部にありますので、どうぞ、このまま読み進めてください。

これを見ていて、気づいたことがいくつかあります。通常のウェブ解析ツールだとなかなか見えにくいことを、メモしておきます。上に掲載した図は、GA4デモテーブルの3か月のデータを対象にしていますが、元データをSQLで加工しています。そのため、例えば、「自然検索によって発生したセッションに絞り込む」や「初回訪問ユーザーのセッションに絞り込む」といった加工は非常に簡単にできます。すると、以下の気づきも変わってくる可能性はあります。
購買ファネルの「連鎖」が視覚化される
Basket → Yourinfo → Payment → Ordercompleted(ピンクの丸)という購買の流れが、比較的独立したかたまりとして浮かんでいます。各ページのPV数は普通のレポートでも分かりますが、「どういう順番でつながっているか」は、ネットワーク図にしてはじめて直感的に見えてくると思います。
ハブページが一目で分かる
Home(赤い大きな丸)とApparel(青い大きな丸)が、ひと目見ただけで「ここが中心だな」と分かります。ノードのサイズをPV数に比例させているので、回遊の起点・中継点になっているページが自然に浮かび上がります。以下はApparelをクリックした状態です。

サイト内検索に改善の余地があるのかも
紫の丸で示したAsearchはサイト内検索結果ページです。対象のサイトがGoogleグッズを販売しているECサイトですから、「こんなものはあるかな?」と思うユーザー(別の言い方をすると、Googleグッズとは分かっているけれど、具体的には何が売っているのかあまり分かっていないユーザー)がたくさんいると思います。
その割にはあまり利用されておらず、また、利用後Homeに戻っているユーザーも一定数います。改善の余地があるのかもしれません。

どうやって作るの?
大きく3つのステップです。BigQueryのクエリエディタだけでもネットワーク図は確認できますが、見栄えの良い図にするにはノートブック(Python環境)との組み合わせが効果的です。
ステップ1(テーブル準備):ノード・エッジテーブルをBigQueryで作る
GA4の events_* テーブルから、 page_view イベントを抽出します。ページをノード(点)、同一セッション内での連続したページ遷移をエッジ(線)として定義し、それぞれのテーブルを作ります。そのうえでCREATE PROPERTY GRAPH`というSQL文でグラフ構造を宣言すれば、準備完了です。
ステップ2(確認):GQLクエリでBigQuery上のネットワーク図を見る
BigQueryでは、グラフ専用のクエリ言語GQL(Graph Query Language)が使えます。MATCH`という構文でノードとエッジのパターンを指定し、RETURN TO_JSON(x)`という形で返すと、クエリエディタ上でそのままネットワーク図が表示されます。「動いているか確認する」用途にはこれで十分です。

なお、この記事で作った図は、表示するエッジを2段階で絞っています。まずBigQuery側でページ遷移が3回以上のものに限定し、遷移数の多い順にトップ300件を取得。そのあとPython側でページをグループ化し、グループ間の遷移合計が500回以上のエッジだけを描画しています。この数値を変えると、図の見え方はかなり変わります。
ステップ3(仕上げ):BigQueryノートブック(Python)で見栄えを整える
クエリエディタのネットワーク図は色やサイズのカスタマイズに限界があります。BigQueryのノートブック機能(実態はColab Enterprise)を使い、Pythonのpyvis`というライブラリでHTMLのインタラクティブ図を生成すると、ぐっと見栄えが良くなります。
ノードの色でページカテゴリを、サイズでPV数を、形状でページの種類(丸=カテゴリー・機能ページ、四角=商品詳細ページ)を表現できます。ノードをクリックすると出ていくエッジが赤、入ってくるエッジが青になる仕掛けも、JavaScriptを数行追加するだけで実現できました。
こちらからグラフ(ネットワーク図)を確認することができます。
まとめ・所感
全体を通じて感じたのは、「遷移」の見せ方としては「あり」だな。ということでした。
ページ遷移は本来、点(ページ)と線(遷移)の集合体です。それを表や棒グラフで表現するのは無理があります。その点、このネットワーク図での表現は、「そのままの姿」に近い気がします。BigQuery Graph Analyticsはまだプレビューですが、GA4データとの組み合わせはなかなか面白いと思いました。気になる方はぜひ試してみてください。