前編では、プロダクトアナリティクスとは何か?について、ChatGPTの支援を受けてその定義を行い、さらに、ベタな例ではありますが、どのような分析かについての架空のストーリーを展開しました。
その架空のストーリーからプロダクトアナリティクスという手法の特徴を抜き出してみましょう。
ストーリーに見るプロダクトアナリティクスの手法の特徴
ユーザーのデータを細かく収集する
ユーザーのどのような行動が「課金しても利用してくれるユーザー」や「課金を長く続けてくれるユーザー」を特徴づけるかは分析してみるまで分かりません。ですので、プロダクトアナリティクスでは、ユーザー行動に関するデータはできるだけ細かく取得する傾向にあります。架空のストーリーでも、以下のデータが分析に利用されていました。
- ユーザーが無料期間にどの機能を使ったか
- どのユーザーが課金して利用してくれたか
- どんな種類の画像を加工したか
- 初回訪問時の参照元メディア
ユーザーを分析する
Web解析がセッションを重視するのと対象的に、プロダクトアナリティクスでは「ユーザー」を分析対象としますので、おのずと、ユーザーを深掘りするようなデータを利用することが増えてきます。ストーリーでは、課金して利用してくれたユーザーの年齢、性別というユーザーに関するデータを分析に利用するために、「プロダクト利用状況のデータ」と「ユーザーの属性データ」を結合して分析対象としていました。
統計学的な検定や機械学習などのテクノロジーを利用する
プロダクトアナリティクスの必須要件ではありませんが、プロダクトアナリティクスでは、必要に応じて、統計学的な検定や機械学習などのテクノロジーを利用することがあります。
統計学的な検定について言えば、Web解析はサンプルサイズ(ユーザーやセッション)が大きいので、例えば、ランディングページごとのコンバージョン率の差がごくわずかでも、統計的には有意な差があるという結論になりがちです。そのため、あまり統計学的な検定は利用されていない印象と持っています。
一方、たとえば、アプリで細かな条件、例えば、「東京以外在住の20代女性で、自然検索から初回訪問してプロダクトを知り、アプリ初回起動から3日以内に画像加工をした、直近1ヶ月間にアプリをダウンロードしたユーザーのうち、猫の画像を加工したユーザーと、犬の画像を加工したユーザーで課金率に差があるか?」のようなお題だと、サンプルサイズが小さくなり、統計学的な検定が必要になる場合があります。
また、ユーザーのどのような行動が課金率に相関しているのか?を調べたい場合、課金率に影響するかもしれない要素がたくさん考えられます。例えば、思いつくだけでも、年齢、性別、初回訪問メディア、ダウンロードした曜日、時間、初回起動した曜日、時間、ダウンロードから初回起動までの経過時間、どの機能を何回使ったか、特定のスクリーンをスクロールしたか、特定スクリーンでの滞在時間・・・などなど多数あります。そうした場合に、機械学習による分析が必要になる場合が多いです。
KGIをLTVとしている
ストーリーでは、「アプリのどの機能が価値として受け入れられているか?」を判断するため、課金率という指標に着目していました。一方、課金率を利用したのは、アプリをローンチしてからまだあまり時間がたっていないための暫定的な措置でした。そして、最も重要な目的指標はLTV(顧客生涯価値)だとしていました。
確かに、ユーザーが課金してアプリを利用してくれることはありがたいですが、例えば、課金を開始してくれた翌月に解約されてしまえば、収益としては非常に限定的です。課金を開始してくれて、長い期間アプリを利用してくれることが、事業の成長上は重要です。そのため、課金してくれたかどうか?も重要ですが、LTVを最重要KGIとしてマーケティングの最適化や機能開発の優先順位の調整を行います。
プロダクトアナリティクスツールとしてのGA4
プロダクトアナリティクスの手法の特徴を理解しました。では、GA4のどこがプロダクトアナリティクスツール的なのでしょうか?今学んだ、プロダクトアナリティクスの手法と対比して考えてみましょう。
ユーザーのデータを細かく集計する
拡張機能イベント(page_view、scroll、click、video_xxx、form_xxx、download、view_search_results)がデフォルトで取得できる他、「イベントの作成」、「イベントの修正」機能を使うとブラウザUIからイベント種類を増やすことができます。もちろん、GTM側で追加設定を行えばもっと柔軟にイベントを追加することができます。こうしたユーザーの行動をできるだけ細かく収集するというGA4の特徴はプロダクトアナリティクス的だと言えます。
ユーザーを分析する
ユニバーサルアナリティクスからGA4に乗り換えたときに戸惑った方が多かったのもこの点だったでしょう。GA4は、もちろんセッションスコープのレポートもありますが、「ユーザー獲得レポート」のようなユーザースコープのレポートが登場したり、ユーザーセグメントやオーディエンスの機能が充実したり、「初回訪問日」のようなディメンションが探索配下で利用できるようになったりと、相当「ユーザーを分析するツール」の色合いが濃くなりました。
また、ユーザーIDによるユーザー識別が可能であったり、カスタムディメンション(ユーザープロパティ)に、登録してくれたユーザーの年齢や性別を格納することで、ストーリーにあったような「ユーザーのサイト利用状況と属性をかけ合わせた分析」もできるようになっています。この特徴もプロダクトアナリティクス的だと言えます。
統計学的な検定や機械学習などのテクノロジーを利用する
利用している人はあまり多くない印象ですが、探索配下には「1日の最大購入者数」といった「合計値」以外の指標や「パーセンタイル」がついた、分布が確認できる指標があります。ユニバーサルアナリティクスで確認できる指標の集計方法は「合計」と「平均」しか存在しませんでした。それと比較すると、相当、統計学的な検証を意識した製品になっていると言えるでしょう。
機械学習については、セグメントを作成する際の「予測指標」という形でGA4に組み込まれています。さらに、GA4が収集したデータをBigQueryにエクスポートすれば、さらに柔軟な統計的学的な検定も可能です。このあたりの特徴もプロダクトアナリティクス的と言えるでしょう。
KGIをLTVとしている
GA4では、特定のユーザー行動に紐付くイベントをコンバージョンとして確認でき、重要な目標指標(KGI)として取り扱うことができます。一方、ユニバーサルアナリティクスにはなかったLTV系の指標について、探索配下のレポートで確認できるようになっています。
LTVと聞くとライフタイムの「収益」が真っ先に思い浮かびます。し、指標として収益に基づいた「LTV」が存在します。しかし、それ以外にも「セッション」、「エンゲージのあったセッション」、「ユーザーエンゲージメント」、「セッションの滞在時間」、「トランザクション」などのLTVが確認できるようになっています。この特徴もプロダクトアナリティクス的だと言えるでしょう。
プロダクトアナリティクスツールとしてのGA4の活用方法
GA4が相当プロダクトアナリティクス的なツールだということが理解できたのではないでしょうか。後編では、こうしたプロダクトアナリティクス的な特徴を持つGA4を、どのように活用すればよいか、について論を進めます。