プロダクトアナリティクスツールとしてのGA4(後編)

プロダクトアナリティクスツールとしてのGA4(後編)

前編では、プロダクトアナリティクスとは何か?を定義と架空のストーリーで説明しました。

中編では、プロダクトアナリティクスの特徴と、GA4のどこがプロダクトアナリティクス的なのかを説明しました。

本ブログ(後編)では、プロダクトアナリティクスツールとしてのGA4をどのように利用するべきかについて、私の考えをお話したいと思います。一つの活用方法の提案だと思ってお読みいただければ幸いです。

 

自社にフィットするユーザーを見つける

まず、ユーザーの中には、「自社にフィットするユーザー」と「自社にフィットしないユーザー」がいる。という認識を持つところからスタートします。一つ、ストーリーを展開してみます。あなたが女性用ファッションのブランドのECサイトを展開していて、商品はミッドからハイエンド。例えば、ワンピース1着は7万円から20万円で、平均単価が10万円というレンジだったとします。(ファッションに詳しくないので、価格感はいい加減です。すみません。)

ある女性ユーザーがワンピースを購入したいと思っています。彼女は17歳。東京までは飛行機で移動する必要があるくらいの距離の、とある町に住んでいます。ワンピースを欲しいと思ったきっかけは、東京の大学に合格し、来春から東京に引っ越すためです。大学に合格したお祝いとして、親戚の人から少なくないお祝いを貰ったので、一生着れるような、思い出になるような素敵なワンピースを探しているんです。

別のある女性ユーザーがワンピースを購入したいと思っています。彼女は39歳。東京都港区に済み、会社を経営する社長です。年収は3000万円前後。ときどき、社員や取引先の幹部の方を自宅マンションに招待してホームパーティを開いて、親睦をはかっています。そうした経緯から、ある程度ちゃんとした服装をしたいと思っています。それで素敵なワンピースを探しているんです。

 

女性ユーザーが二人いて、ふたりとも素敵なワンピースを探しています。ユニバーサルアナリティクスの世界観であれば、どちらのユーザーにも広告を出稿したいところです。

一方、ユーザー軸で考えると、どちらのユーザーがあなたのビジネスにとって「自社にフィットするユーザー」でしょうか?明らかに後者ですね。前者の女性はもしかしたら、1着はワンピースを購入してくれるかもしれません、しかし、「その次の一着」を購入してくれるまでには少々時間がかかるかもしれません。一方、後者の女性は、もしワンピースを気に入ってくれたら、ジャケットも、パンツも購入してくれる可能性があるでしょう。

「自社にフィットするユーザー、しないユーザー」がいる。という認識のもと、どういうユーザーが自社にフィットするのか?を収益LTVの観点から見つけます。LTVの高いユーザーが自社にフィットするユーザーだからです。ユーザーに切り口を当てはめて見つけていきましょう。

  • どんな商品を最初に買ってくれるユーザーなのか
  • 初回訪問はどのようなチャネルから行うユーザーなのか
  • 何曜日の何時ころアクセスするユーザーなのか
  • 初回訪問から何日目に買ってくれたユーザーなのか
  • セッションLTVは多いユーザーなのか、それほどでもないのか
  • いろいろなカテゴリーの商品を横断して閲覧するユーザー(ショピングユーザー)か、特定のカテゴリーの商品を目指して閲覧するユーザー(目的買いユーザー)なのか
  • 地域はどこに住んでいるのか
  • サイトを閲覧する環境はdesktopメインか、mobileメインか?
  • mobileでアクセスする場合、その機種はなにか?

上記の例のように自社にフィットするユーザーの特徴を掴むための切り口はたくさんあります。適切な切り口を適用することで、「自社にフィットするユーザー」についての解像度を高めます。この作業をするときに、GA4のプロダクトアナリティクス的な特徴である、ユーザー行動の詳細データを取得する、必要に応じて統計学的な検証を行い、差異(たとえば、行動Aをしたか、しなかったかによる収益LTVの差異)が統計学的に優位かどうかを検証する、(セッションでなく)ユーザーを分析するなどの特徴が生かされます。

 

ファネルを縦に切ってセグメントする

自社にフィットするユーザーの像が固まってきたら、それらのユーザーにターゲティングして広告で集客を行います。もちろん、「自社にフィットするユーザー像」にドンピシャのターゲティングができない場合もあるでしょう。そのような場合は、「濃度高く」そうしたユーザーがいるセグメントをターゲティングします。

広告以外では、商品のディスクリプションにつかう言葉遣いや訴求ポイントを自社にフィットするユーザーのペルソナに合わせるという工夫ができます。また例えばオウンドメディアを展開するのであれば、記事や動画、また、その記事や動画を告知するSNSのトンマナや言葉選びを自社にフィットするユーザーが喜んでくれるテイストにします。

そのターゲティングを行う時に気をつけるのは、ファネルを横に切ったターゲティング(左図)をしない。ということです。今すぐは購入してくれないかもしれない。でも、購入したい時期が来れば自社から購入してくれるだろうユーザー、一度購入してくれればその後収益LTVが増えていくだろうユーザーをターゲティングします。つまり、ファネルを縦に切ってターゲティング(右図)をします。

 

 

ターゲティングが正しかったかどうかは、標準的な購入サイクル時間(自社顧客が自社商品を購入する標準的な頻度を年で割り戻したもの。年に3回購入してくれるのであれば、4ヶ月)経過後に、ターゲティングごとの「ユーザー単位コンバージョン率」と「LTV」で判断します。データが蓄積されていけば、もっと長い期間でのLTVでも評価したいところです。

ファネルを下ってもらう施策を立案、実施、効果測定する

自社にフィットしそうなユーザーをターゲティングして広告を出稿する、あるいは、自社にフィットしそうなユーザーが好む記事をオウンドメディアに掲載し、自然検索から集客する、といった努力の次に行うことは、集客したユーザーにファネルを下ってもらう施策の実施です。

2023年10月26日の a2i 主催セミナー 「コンテンツマーケティングの本筋の話をしよう~オーディエンスビルディングの思想とその計測・評価法」で JADEの伊東さんのお話にあった、moving audience( = オーディエンスを動かす)に該当する部分です。伊東さんが言及された、Content Markeing Instituteの当該記事 https://contentmarketinginstitute.com/articles/gated-content-audience-journey/ にある模式図(以下)でいうと、上段にあたるかと思います。

 

 

つまり、集客した「自社にフィットする可能性の高いユーザー」の人たちに、何かしらのアプローチをし、「購入する時期」が来たら自社から購入してもらえるようにする活動です。この活動を設計するには、複数セッションを経てから購入した既存ユーザーの行動を分析することが役に立ちます。GA4で言えば、ユーザーエクスプローラーを利用したn1分析を繰り返すことより、パターンを探すことになります。

この「ファネルを下ってもらう活動」を行う際、ユーザーのメールアドレス(とメール送付のオプトイン)を取得していないと、アプローチできる手段はセグメントされたオーディエンスに対するリマーケティング広告だけになります。もし、メールでアプローチしたいのであれば、ユーザーにとって価値のある(はずの)コンテンツをウェブサイトで提供し、そのコンテンツの入手には、メールアドレスの登録を義務付けることが必要です。

リンクを貼った先のContent Markeing Instituteの記事で、何度も「Gated」にするか?という話題がでてきますが、Gatedとはコンテンツを「ゲートに入れる」つまり、メールアドレスと引き換えにアクセス可能な状態にすることを意味します。コンテンツをゲートにいれることにはメリット、デメリットがありますが、個人的には「ユーザーにとって本当に価値のあるコンテンツ」を用意してそのコンテンツをゲートに入れるのが良いと思います。メールでのアプローチが可能になるからです。

 

まとめ

以下のとおり、3つのブログ記事にわたって、プロダクトアナリティクスツールとしてのGA4について説明してきました。楽しんで頂けましたか?今後、みなさんがGA4に触れるときの「接し方」に多少とも変化がうまれ、「それまでよりは使いやすい」となるようであれば嬉しいです。

 

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ふーっ、思ったよりも長い記事となりました。GA4ってユニバーサルアナリティクスと全然違うな。ちゃんと勉強しなくちゃな、と思ったあなた、良いオンライン講座がありますよ。この機会に是非、しっかりと勉強してみてください。

 

 

また、GA4時代の新しい認定資格として「Google アナリティクス認定資格」があります。資格取得用のUdemy講座をリリースしていますので、こちらもご検討ください。「テストだけ受かれば良い」という姿勢でなく「テスト対策をしながらGA4について理解する」という姿勢で講座を展開しています。スライド枚数238枚、尺が5.5時間です。