わたしの考えるKPI(として成立する指標)の要件

わたしの考えるKPI(として成立する指標)の要件

Webマーケティングでは、たくさんの指標が比較的かんたんに入手可能ですが、自社や自部署において、どの指標をKPI (Key Performance Indicator | 重要業績評価指標)として設定するかについて分からない、あるいは、関与する人が複数いて、人によって意見が異なり、まとまらない。ということはあるでしょう。

 

そんなときに、KPIになれる指標の要件があると助かるんじゃないかと思ってこの記事を書いてます。Wikipediaには、以下の通りに、SMARTというフレームワーク(クリックで、Wikipediaにジャンプします)を紹介していますが、木田版のKPI要件フレームワークと思っていただければよいかと。

 

KPIとなる指標の要件

いきなり結論ですが、KPIとなる指標の要件は、以下の3つだと思います。

  1. KGIに対して因果関係があること
  2. 計測できること
  3. 自社(のメンバー)の行動で影響を及ぼせること

1.KGIに対して因果関係があること

簡単に言うと、KPIとして設定した指標が良くなったら、KGI(重要目標達成指標)も良くなる。KPIが悪化すればKGIも悪化するという関係のある指標で、かつ、「KPIを変化させるための行動が原因、KGIが結果」の関係になっている指標ということです。KGIとは、なぜWebマーケティングをしているのか?(もっというと、なぜWebサイトを公開しているのか)の目標を数値で表したものです。一般的に、ECサイトであれば売上金額、B2Bサイト(リードジェネレーションサイト)であればお問い合わせ数などをKGIとして設定します。

KGIは結果指標ですが、KPIは行動と紐づいています。そのため、KPIを設定すると、マーケティング部署のメンバーはその数字の改善を目指して努力することになります。そのため、KPIが良くなってもKGIの値がよくならないのだったら、KPIがメンバーの努力の方向をミスリードしてしまいます。ですので、KPIがKGIに対して因果関係があることは必須の要件だと思います。

逆に言うと、KPIを設定するときには、まずは、KGIがしっかり定義されている必要があります。その上で、どの指標がKPIになるかを検討する必要があります。KGIを定義していないのに、この指標はKPIになるか、ならないかを議論しても意味はありません。

 

2. 測定できること

KGIが、たとえば「ECサイトにおける売上金額」だとして、それに対して、「担当者の頑張り」は、KPIにはなりません。「頑張ったこと」が計測できないからです。一方、頑張ったという行動の程度を表す指標として、「SNSへの記事投稿本」を設定したとすれば、(それが条件1をクリアしていれば)KPIになり得るでしょう。計測できるからです。

 

3. 自社(のメンバー)の行動で影響を及ぼせること

例えば、傘を販売するECサイトを運営していて、売れた本数をKGIとしていたとします。いろいろ分析すると「月間の雨の日の日数」がKGIと強い因果関係があることが分かったとします。つまり、雨の日が多ければ多いほど、傘の売れる本数は増える。また、月中の雨の日の日数は簡単に計測できます。

とすると、条件1と2をクリアしている訳です。しかし、「月間の雨の日の日数」はKPIにはなれません。自分たちでコントロールできないからです。

 

一番難しいのは因果関係の証明

上記のKPIの3要件のなかで、一番確認が難しいのは、設定しようとしているKPI候補がKGIに対して因果関係を持つかどうかの判断です。どのような場合でも必ず当てはまるという訳ではありませんが、その判断を行うための一般的な手順としては、

  1. まず、相関があるかどうかを確認する
  2. 相関があれば、次は「常識」を使って因果関係があるかどうかを判断する

ということになるかと思います。

相関関係の有無の確認は「散布図」を作成すると比較的に行うことができます。KGIをY軸(=縦軸)にし、KPI候補をX軸(=横軸)に設定し、「日」をプロットすると良いです。すると、KPI候補が高かった(あるいは低かった)日にKGIは高かったのか、低かったのか、影響なかったのかがわかります。

以下は、今、読んでいただいている記事が掲載されているこちらのサイト(kazkida.com)のデータです。このサイトは、書籍を販売しているAmazonや、動画講座を販売しているUdemyへのジャンプをコンバージョンとして設定しています。つまり、それらサイトへのクリック数が一つのKGIです。

そのKGI(ジャンプ数)に対し、「直帰数」をKPIの候補として検討してみます。散布図を作成するにあたっては、「セッションの多寡」の要素を除去するために、Y軸は、セッションのコンバージョン率(ジャンプが発生したセッション÷セッション)X軸は、直帰率(直帰の発生したセッション÷セッション)を設定し、散布図を描いてみました。

もし、相関関係があるのであれば、直帰率の高い日はセッションのコンバージョン率は低い、直帰率の低い日はセッションのコンバージョン率は高い、つまり、プロットされた円が右下がりの分布になるはずです。ところが、この散布図はそうなっていません。直帰率とコンバージョン率に相関はないと言えそうです。相関がなければもちろん因果関係はありません。

したがって、本サイトにおいては、「直帰率」はKPIとはなり得ないと判断した方が良いでしょう。

 

実際のKPIは・・・

上記の例では、アマゾンやUdemyへのジャンプ数(セッションが多ければジャンプ数は増えるのは自明なので、セッションの多寡の影響を除外するのだったら、コンバージョン率)をKGIとして、直帰率がKPIとなり得るかを調べてみました。その結果、直帰率はKGIと相関がない(=相関関係がなければ当然因果関係はない)ことがわかり、KPIとならないことがわかりました。

では、このサイトの実際のKPIは何でしょうか?実は、サイト運営主体としての私は、アマゾンやUdemyへのジャンプ数はそれほど気にしていません。というのはこのサイトを運営する目的は書籍やUdemyの販売促進ではなく、ブランディングだからです。

で、ブランディングが成功している状態を「直近28日間のユニークユーザー数が1500人を超えていること」と定義しており、それがKGIとなっています。そしてKPIは、直近28日間におけるブログ記事の公開数です。つまり、ざっくりいうと、ブログを公開すると、最初はSNS経由で、その後、じわじわと自然検索からユーザーがサイトを訪問してくれて、ユニークユーザーが増えるのです。ですので、因果関係があります。

また、直近28日間におけるブログ記事の公開数はもちろん簡単に計測可能ですし、私の努力次第で増やすことができます。つまり、KPIの要件を満たしています。私がKGIをどのようなチャートでトラッキングしているかについては、『できる逆引き Googleアナリティクス4』の著者が教える! GA4のLooker Studioでの可視化例という記事をインプレスさん運営のできるネットに寄稿していますので、興味のある方はそちらもご覧ください。

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なるほどー、KPIは、KGIに対して相関している必要があって、かつ、因果関係の「要因」側になってなきゃいけないんだなー。相関関係の有無は散布図で確認できるのかー。。。

で、散布図ってどうやって描けばいいんだっけ?という方、Tableauなら簡単に散布図を描けます。Tableauを学ぶ良い講座がありますよ。